二重被爆者を「愚弄」した(?)BBC批判に思う
BBCの「QI」というコメディトーク番組で、日本の二重被爆者の方がトピックのひとつに取り上げられた件。
私もツイッターなどでいろいろ書いたけれど、番組についての私の意見と理解は加藤祐子さんという翻訳などをされている方のブログとほぼ重なるので、こちらをぜひ読んでいただきたいと思います。加藤さんが番組中の会話を全翻訳されたエントリーはこちらです。
この内容を理解すれば、日本の各新聞が当初書きたてた「被爆者を愚弄/嘲笑した」(追記:記事リンク切れ)というような事実がないことはわかると思います。この点で、たとえば日経新聞の社説担当者が本当にこの番組を見て笑っていることの内容を理解して書いたことなのか、きわめて怪しいと私は思います。
興味深かったのは、この加藤さんのほかに、在英ジャーナリストの小林恭子さん、@nofrillsメモ魔ですさんといった方々が、それぞれの表現や立場は微妙に違えど、かなり同じことを言っていたことです。その様子はtogetterにまとめられています。イギリスに親しみのある方は@nofrillsさんのこのまとめブログも、背景や歴史の話もあって興味深いと思います。
とはいえ。
私も小学生のうちから原爆展にひとりで足を運んだりしつつ日本で育ちました。核兵器の非人道的な破壊力・悲惨さ・残酷さが、日本でほどは世界で知られていないことに普段から心を傷めている一人です。このQIでも、被爆者を笑っているわけではないとわかっても、いい気分はしません。軽々に扱うなと抗議するのは必要なことだと思います(大使館が対応すべきだったかどうかは疑問ですが)。
とはいえ。
どこか今回の日本での騒ぎで気持ち悪いのは、こんなに日本って原爆の悲惨さが理解されていないことに一丸となって怒れるほど、反核でまとまってたっけ?と思ってしまうことです。最近、政治家が非核三原則を緩めることに言及したり、米国との核持ち込みの密約が明らかになったり、一部の有名人が日本の核武装を声高に叫んだりしても、あまり批判する声が大きくないことが気になっていたからです。イラクで劣化ウラン弾が使われたことを知らない人も多いようです。
「原爆って言うのはほんとうに非人道的な恐ろしい兵器なんですよ、日本はひどい目に遭わされたんです」という台詞は、日本が核兵器を所有したら言えなくなることのはず。あの悲惨さを、地球上のどこかの人間に与える用意があるということだから。
あの思いを味わう人間がもう二度と出ないようにしたいという未来のためのBBC批判なら、今回の騒動も無駄ではなかったと個人的には思えなくもない。でもどこか、謝罪を求めることにばかりこだわる声が大きいような気もするのです。