涙の谷
大西洋に浮かぶグランカナリア島に、涙の谷と呼ばれる道がある。Valley of the Tears(VOTT)としてStravaセグメントやClimbbybike.comにも出てくる斜度で有名なクライムなので、サイクリスト泣かせという意味だろうと想像していたら、カフェの店員さんに地元でもそう呼ばれていると今回の旅で聞いた。人家寥々とした風景とあいまって、とたんに寂しげで恐ろしげに思えてくる。
そうでなくても12km、平均勾配11%、20%超の区間がたっぷり続く魔の谷だ。今回はこのVOTTを目玉に、Rapha Cycling Club(RCC)の友人たち10人と一緒の自転車ヒルクライム合宿でこの島を訪れた。
以前「サイクリスト」での連載で書いたが、ヨーロッパではヒルクライム名所や暖かい気候を求めての自転車トレーニング合宿が大きなブームになっている。英ではRapha Travel や La Fugaなどのロードサイクリストに焦点を絞ったパッケージもあるし、今回のわたしたちのように宿やクルマを手配し、ルートも自分たちで決める人たちも多い。
西アフリカ沖に位置するグランカナリア島とテネリーフ島は、その温暖さや海抜0mから2000m級の山岳まで一気に登れる地形からチーム・スカイ、ティンコフ、アスタナなどのプロチームの冬期合宿、高地トレーニング地として知られる。グランカナリアは、今年わたしたちが入る直前までカンチェラーラも目撃されていたとか。
自転車合宿をするサイクリストは年々増えてきているようで、この島でも人気のヒルクライムルートのカフェに自転車ラックが登場していたり、空港のスタッフやタクシーの運転手が自転車ケースを見て「これは何?」と聞いてこなくなったことなどでもそれを感じる。「サイクリングは新しいゴルフだ」という指摘はホントに当っていると思う。
自分的には去年は仕事の忙しさを理由にして全然走らなかったので、2016年はもうちょっと走りこみ、自転車合宿もたくさんしていろいろなライドにチャレンジしたい。冒頭の涙の谷もなんとか1時間半もかかって走り切ったけれど、もっとヒラヒラと登れるようにならなければ!